ピアノにもメタ認知が大切!
今日はスタンフォード大学・オンラインハイスクール校長の星友啓さんの
コラムの中から為になりそうな事柄をご紹介します。
人間が学ぶ時、脳や心で何が起きるのか?
そのメカニズムを踏まえて効果的な学習法って?
心理学や脳科学の視点から、こうした問いを研究するのが、「学びの科学」
ここ数十年でさまざまに重要な知見を生み出してきました。
その学びの科学で最も熱心に研究されているもの。
「それ」は、理系や文系を問わず様々な分野で、幅広い年代に対して研究が蓄積されており、
トレーニングすることで、応用力や問題解決能力が上がる。
また、学習者の才能や知性の2倍も「それ」が学習効果を左右する。
つまり、「それ」をアップするのが学習効果を上げるのには最も手っ取り早い。
そう「それ」は「メタ認知」。
最近耳にする機会が増えたものの、今さら聞けない、それはなに?
今回は、「メタ認知」の入門と科学的な解説、
トレーニング方法をギューと濃縮してお届けします。
「自己管理能力」もメタ認知の一つ
まず、「認知」とは、物事を見たり聞いたり、知っていたりすること。
それに対して「メタ認知」とは、物事に関する認知の一段上のレベルの認知、
つまり「認知の認知」ということになります。
たとえば、ソクラテスの「無知の知」は、「知らない」ということを「知っている」。
つまり、「認知の認知」で、「メタ認知」ということになります。
また、科目の得意・不得意の意識もメタ認知の一つ。
自分は「数学が得意」「英語はアレルギー」という人もいるかもしれません。
そうやって自分は「得意」とか「苦手」ということを知っている。
つまり、自分の得意や苦手認知の認知、「メタ認知」を持っていることになります。
また、英語が苦手だったら「英語は自分にとって難しいものだから
さらに集中して聞こう」というように、自分の得手・不得手に関する
「自己認知」にひもづけ、学習法や学習姿勢に関する認知もあります。
自分の知っている学習ストラテジーは何か。
いつ、どのように使うのか。
いわば、「学習ストラテジーの認知」です。
さらに、誰しも勉強を進めていく中で、目標や計画を立てたり、
進度や達成度を評価したりします。
そうした「自己管理能力」も、メタ認知の一つです。
このように、メタ認知には様々なカテゴリーがあります
さて、メタ認知能力が高いと学びの効果が高いのですが、
このことを脳科学の視点から解説していきましょう。
まず、私たちが、幸福感や快楽を感じると脳の中の「報酬系」
といわれる脳内回路が活躍します。
私たちが「幸せだなあ」「気持ちいいなあ」などと感じている時、
脳内でドーパミンが分泌され報酬系が活性化されています。
それにちなんでドーパミンは「快楽物質」と呼ばれています。
さて、そのドーパミン。
実は私たちが新しいことを学んだ時に、報酬系が活性化されて分泌量が
増えることがわかっています。
確かに、わからなかったことが理解できたり、
難しいスキルをマスターしたりする時に嬉しかったり、
スカッとしたりしますね。
その感覚は、実は、快楽の感覚と同じところからきているわけです。
まさに、脳にとって「学びは気持ちいい」のです。
さて、その報酬系を活性化させるドーパミンですが、
ワーキングメモリーを活性化させたり、
記憶の定着を促したりして学習に重要な役割を果たしています。
そしてこのドーパミンは、何かを学んだ時だけでなく、
新しい情報を学べると期待するだけでも分泌されるのです。
知りたいと思えば思うほど、つまり、好奇心が高ければ高いほど、
ドーパミンのレベルが上がり報酬系がさらに活性化する。
新しい情報を期待するというのは、自分がそのこと自体を知らないことを
認識することが前提となるのです。
つまり、自分が知らないと知る「メタ認知」を持つことで、
ドーパミンレベルが上がり、学習効果が上がるのです。
同様に自分の知識や学びに関するメタ認知を持つことで、
学習効果が格段に変わってくることがこれまでの
「学びの科学」で確認されてきました。
【簡単に始められるメタ認知のトレーニング】
私たちのメタ認知能力はトレーニングで伸ばしていくことができます。
それゆえ、最先端の教育現場でも「メタ認知」が
キーコンセプトの一つになっているのです。
メタ認知を意識した学習方法を取り込むことで、
メタ認知のスキルが向上し、学習効果が上がる。
みなさんの学習習慣にぜひ取り入れていただきたいメタ認知ルーティーンを拙著
「脳科学が明かした! 結果が出る最強の勉強法」でも数多く紹介しています。
今回はそこから一つだけ手軽な方法を。
1日の最後に学習日記(ジャーナル)をつける。
寝る前がお勧め。
下記の点のいくつかに焦点を置いて毎日5~10分くらいの簡単なものでかまいません。
目的は自分の学習や知識に目を向ける習慣をつけることで
メタ認知力をトレーニングすることにあります。
1.今日の勉強前と後で自分の知識やスキルがどう変わったか
2.今日の学習目標は達成できたか。明日の予定や目標をどう変更するか
3.今日の勉強法やストラテジーはどうだったか。効果的と感じたか
4.自分の得意不得意や、強み弱みなどで、感じたことはあるか
5.次回の勉強での改善点はあるか。あるならどうするか
この学習ジャーナルでメタ認知力がアップします。
他のメタ認知トレーニングと組み合わせて、ぜひお試し試いただき、学習効果を最大限にアップしてください!
『スタンフォード式生き抜く力』にある各種トレーニングなどとも組み合わせると効果絶大です。
最新脳科学に基づく学びの科学をぜひ実践してみてください。